東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2141号 判決 1976年5月20日
控訴人(附帯被控訴人)
小林一郎
被控訴人(附帯控訴人)
株式会社小宮山商事
右代表者
小宮山恵一
右訴訟代理人
久野幸蔵
主文
本件控訴を棄却する。
原判決の主文第一項中建物の明渡しを命ずる部分は被控訴人(附帯控訴人)において金一〇万円の担保を供するときは仮りに執行することができる。
附帯控訴その余の請求を棄却する。
控訴費用及び附帯控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。
控訴人(附帯被控訴人)は金五万円を国庫に納付せよ。
事実及び理由
控訴人(附帯被控訴人、以下控訴人という。)の陳述したとみなされた控訴状によれば、本件控訴の趣旨は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めるというにあり、被控訴人(附帯控訴人、以下被控訴人という。)の代理人は、「本件控訴を棄却する。附帯控訴として、原判決の主文第一項は仮りに執行することができる。控訴費用及び附帯控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
被控訴人主張の請求原因事実は、原判決の事実摘示(原判決二枚目表一行目から三枚目表九行目まで)と同一であるから、これをここに引用する。
控訴人は、原審において、被告として適式の呼出を受けながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しないため請求原因事実を自白したものとみなされて敗訴の判決をうけたこと記録上明らかであり、当審においても、控訴状を提出したのみで、適式の呼出を受けながら口頭弁論期日に出頭せず、かつ、請求原因事実に対する答弁をしない。
よつて、被控訴人主張の請求原因事実は、すべて控訴人において自白したものとみなすべく、それによると、控訴人は無権限で本件建物部分に入居し、これを占有しているものということができるから、被控訴人の請求は理由があり、これを認容した原判決は正当であつて本件控訴は理由がなく、附帯控訴に基づき、原判決の主文第一項中建物の明渡しを命ずる部分について金一〇万円の担保を供することを条件に仮執行の宣言を付するを相当とし、附帯控訴のその余の請求は不相当であるからこれを棄却すべく、なお、前叙の経緯に徴し、本件控訴は控訴人が訴訟の完結を遅延せしむる目的をもつてこれを提起したものと認めるに十分であるから、当裁判所は、控訴人に対し本件控訴提起の手数料納付金額の一〇倍以内である金五万円を国庫に納付することを命ずるものとし、民事訴訟法第三八四条第一項、第九五条、第八九条、第一九六条、第三八四条の二を各適用して、主文のとおり判決する。
(渡部吉隆 古川純一 岩佐善巳)